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最高裁判所第一小法廷 昭和60年(行ツ)73号 判決 1985年9月12日

愛知県春日井市桃山町一丁目一二七番地

上告人

マルホン工業株式会社

右代表者代表取締役

岸勇夫

右訴訟代理人弁護士

早川登

愛知県小牧市大字小牧一九五〇番地

被上告人

小牧税務署長

竹中幸男

右指定代理人

菅谷久男

右当事者間の名古屋高等裁判所昭和五八年(行コ)第六号物品税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和五九年一一月二八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人早川登について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論違憲主張は、その前提を欠く。論旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決の不当をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(最判長裁判官 矢口洪一 裁判官 谷口正孝 裁判官 和田誠一 裁判官 角田禮次郎 裁判官 高島益郎)

(昭和六〇年(行ツ)第七三号上告人マルホン工業株式会社)

上告代理人早川登の上告理由

○昭和六〇年一月一二日付け上告理由書(一)記載の上告理由

一、上告人・控訴人・原告マルホン工業株式会社(以下単に原告会社という)が昭和五一年二月から昭和五二年迄の間に合計五万七、七九五台を加工移出したパチンコ機は、物品税法第一条別表第二種の物品「八」5のパチンコ機の製造(物品税法第三条二項)に該当しない。

右物品税法にいう製造は、パチンコ機を製造するにつき、すべてを新品で組み立てる場合をいう。即ち、甲一七号証の通り、ベニヤにセル柄を貼り、ベニヤ板に孔をあけ、ルーター加工により孔を取り付け、役物取付孔を完成し、釘を打つ為のゲージ押しをし、釘打をコンピューター装置でなし、釘打ちを完成し、役物を取付け、レール締めもなし、レール及び役物取付を完了し、木枠に金枠を取付け、ベニヤと木枠を締付け、ハンドルを取り付け、ハンドルとベニヤ取付を完了し、表部品の調整をし、前面のハンドルの取付を完了し、前面の役物取付をし、その取付を終了し、裏つなぎをし、裏部品を取付け、裏部品の取付けを完成し、表面テストをし、表裏を一体として検査し、内枠と外枠を結合し、内枠、外枠の結合を全部完成し、前面に原告会社の表示をし、之を倉庫に入れる。これでいつでも受注により販売できる事になる。

以上が製造である。

原告会社は、これを新製造品として取扱い販売して物品税を納入している。

これが物品税法にいう製造である。

原告会社は各地のホールから古くなった中古パチンコ機を引きとり、その中で使用出来る上飾り、外飾り、外枠、中枠、タンク、自動カバー(上下)、ケースカバー、連チャンカバー、玉寄せ等を使用し、之に新しい部品をつけてパチンコ機を完成させるのは改修であって、製造ではない。之を製造とした一、二審の判断は法令の解釈を誤ったものである。

原告会社は、前回の調査等(昭和四九年一一月)より同じものを改修により造っている。即ち、昭和四八、四九年頃より、裏面パネル(当事は二枚)をオーバーホールして造っていた。以前も現在も同じ事を継続している。そして昭和四八年頃、分離成(盤面交換式)パチンコ機を造っていたのは原告会社のみである。

昭和四八、四九年原告会社の製造していた甲一四号証の一及至五のパチンコ機と甲一五号証の一及至五のパチンコ機は、製造工程は全く同一である。

但し、甲一四号証と甲一五号証のの各パチンコ機は、甲一四号証の四のベニヤのついた裏面か、甲一五号証の五のベニヤのない裏面かの違いのみである。

原告会社は、どちらの前面、裏面も分離解体してオーバーホールをしていたのである。

何れも同じ方法でやっていた。双方は一貫して同じオーバーホールしていたのであり、現にしているのである。

時勢の推運でベニヤがプラスチックに変更したにすぎないのである。外枠、内枠、金枠(二枚)は何れも同じである。

原告会社は甲一四号証の裏面についても、解体したり、取り替えたり、みがいたり、清掃等してオーバーホールをしていたのである。

原告会社に対し被上告人・被控訴人・被告(小牧税務署長、名古屋国税局長)(以下単に被告という)が前回(自昭和四九年一一月五日・至昭和四九年一一月一五日)調査に来たとき、原告会社の製造(場内にて今回と同じ修理行為である手直し加工中であった)現場にて被告担当者に同じ現品を提示し、物品税の課税の対象になるか否かについて尋ねた所(原告会社代表者岸勇夫の昭和五六年一二月一四日付尋問調書五七枚目)、課税品としてゞはなく部品として記帳せよとの指示があったので、それ以後継続して現在に至ったものである。製造品即ち課税品としては、記帳していないのである。だから原告会社としては、今回の課税である被告の更正決定処分については、全く違法であると言わざるを得ない。

尚、前回被告が調査した時(昭和四九年一一月)、被告より課税品としての指示があれば原告会社としては、販売する時に物品税を当然納入してきたのである。又今回の調査時(昭和五二年一一月)点での被告担当者の説明では部品の場合、原告会社で作業すれば、課税品として対象となり、ホールで行うものは非課税との事であるが、なぜ回調査時(昭和四九年一一月)に、その指示がなされなかったのか被告の調査のある度にバラバラの行政指導は納税者にとって、誠に迷惑な事である。疑わしきは課税せずで、本件更正処分は違法で取消さるべきものである。

尚、多数の(盤面分離式)パチンコ機メーカーは、昭和五三年五月二九日以降はすべて物品税の対象として記帳し、納税している。

原告会社のみを新たな製造行為として扱うのは憲法違反でもある。法の下の平等の原則に反する。

原告会社はこゝで、本件更正処分が憲法に違反する事も主張する。

二、被告が、原告会社の改修品について課税する事にしたのは、甲一一号証の昭和五三年五月二九日の説明会になってからである。

物品税の解釈については、従来行政庁(被告も含め)の指導によっている事は事実である。

右五月二九日の説明会も行政指導である。五月二九日に全国のパチンコ機メーカーは全部出席している。行政庁の解釈により物品税の納税義務を果す為である。

甲一三号証にある通り、日本遊技機工業組合が名古屋にあり、全国のパチンコ機製造者はこの組合に加盟し、被告も組合と連携して国とメーカーとの納税の仲介をしているからである。

この説明会も組合の要請により開かれたものである。

原告会社の改修品が課税対象になるかどうかはこの折に始めて被告にによりその解釈が示されたのである。

三、租税法律主義(憲法第三〇条)により、原告会社の改修品に課税するのは、右の二項の説明よりして、不遡及の原則に違反する。租税法律主義のもとでは、租税不遡及の原則が妥当する。遡及的に原告会社の利益に変更する事は許されるが不利益に変更する事は許されない。

このように不遡及の原則は、立法政策上の原則ではなく、憲法上の原則である。(北野弘久判例研究、日本税法体系――税法の基本原則――「租税法律主義」三六頁、金子宏「租税法の基本原則」「租税法講座Ⅰ、」ぎょうせい・二二六頁)。

四、次に昭和五三年五月二九日の被告の説明会の解釈(これは通達と解してよい)により、原告会社改修品が課税対象になるかについて考案する。通達は法律ではない。通達が法規でない事は従来判例(最判昭和三八・一二・二四、訟務月報一〇巻二号三八一頁、その他の判例について、判例研究、日本税法体系1、税法の基本原理、北野弘久「9、通達課税、通達行政」)の示す所である。

パチンコ遊技器についての最高裁の昭和三三年三月二八日「民集十二巻四号六二四頁」判例は、今でも違憲であると考える。以下、北野教授の説明を引用する。

本件は昭和二六年の物品税の事件である。原告(控訴人・上告人)らはパチンコ球遊器の製造業者である。パチンコ球遊器については、従来、物品税はほとんど課税されていなかった。もとより本件の原告らも課税を受けていなかった。まず昭和二六年三月の東京国税局長通達、ついで同年一〇月の国税局長通達によってパチンコ球遊器が物品税の課税物品を構成することが明らかにされた。税務当局は右通達に基づいて原告らに物品税の課税処分を行なった。

原告らはいったん物品税を納付した。しかし、その後、原告らは右処分を無効としてその無効確認および納付した税金の返還を求めて出訴した。

右の事件について、最高裁は全員一致でつぎのように判示した。「(1)物品税は物品税法が施行された当初(昭和四年四月一日)においては、消費税として出発したものであるが、その後次第に生活必需品その他いわゆる資本的消費財も課税品目中に加えられ、現在の物品税法(昭和一五年法律四〇号)が制定された当時、すでに一部生活必需品(たとえば燐寸)や撞球台、乗用自動車等の資本もしくは資本財たり得べきものも課税品目として掲げられ、その後の改正においてさらにこの種品目が数多く追加されたこと、いわゆる消費的消費財と生産的消費財の区別はもともと相対的なものであって、パチンコ球遊器も自家用消費財としての性格をまったくもっていないとはいいえないこと、その他第一、二審判決の掲げるような理由にかんがみれば、社会観念上普通に遊戯具とされているパチンコ球遊器が物品税法上の遊戯具うちに含まれないと解することは困難である。(2)本件の課税がたまたま通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基づく処分と解するのに防げがなく、所論違憲の主張は、通達の内容が法の定めに合致しないことを前提するものであって採用しえない」。

以上で明らかのように、本件については二つの問題、すなわち<1>物品税法の解釈問題と<2>通達課税をめぐる問題がある。納税者側からいえば、真の争点は、後者の通達課税をめぐる問題にあるとみなければならない。

まず、第一の物品税法の解釈問題について簡単な検討を加えておこう。原告らは、物品税は間接消費財であり、それゆえ法の格別の規定のないかぎり、物品税の課税物品は消費的消費財にかぎられるべきであるとして、資本的消費財であるパチンコ球遊器を「遊戯具」に含めて解することは妥当でないと主張している。実定税法の理解に当って租税理論上の知見を借りる必要のあることはいうまでもないが、しかし、租税理論上の租税性格論が直ちに法解釈論のあり方を規定するものではない。

裁判所もいうように、パチンコ球遊器が「遊戯具」に該当するか否かは、物品税法の規定自体の合理的解釈によって決せられるべき問題であるといわなければならない。結論的に、物品税法が資本的消費に向けられることを本来の使命とする物品だからといってこれを物品税の課税対象から除外しているとは解しえない。のみならず、元来、消費的消費財と資本的消費財との区別は相対的なものであり、パチンコ球遊器は今日ではもっぱら営業用に使用されているけれども、娯楽品として自家用にも使用されうるものであり、現にそのような例がないわけではない。もとより、パチンコ球遊器は社会通念上「遊戯具」に該当するものであることについては何人も異論のないところである。それゆえ、法において別段の定めがないかぎり、裁判所もいうように、パチンコ球遊器は物品税法上の「遊戯具」に該当するものであるといわねばならない。たゞ資本的消費財である撞球用具を「撞球用具」として個別に法において特掲している例に照らし、「パチンコ球遊器」を物品税の課税対象物品と解するためには「遊戯具」とは別に「パチンコ球遊器」としての個別の特掲が必要なのではないかという原告側の疑問に対しては、裁判所は正面からこたえていない。この点の原告側の主張については、それなりの合理性が存するので、裁判所としては正面からこたえる必要があったといえよう。

つぎに第二点の検討に移ろう。第二点はいわゆる通達課税に関する問題である。

すでに指摘したように、通達は、その本来的性質としては、行政規則の形式であって、法規の形式でない、それゆえ、それは行政部内において拘束力をもっても、国民および裁判官に対しては拘束力をもたない。つまり通達は法解釈学的には法源性を有しない。それゆえ、通達違反ということで違法になることはない。もし、通達に違反して違法になるという場合があるとすれば、それは法理論的には通達自体に違反して違法になるのではなく、当該通達の根拠となった法令に違反して違法になる

本件で問題になっているパチンコ球遊器課税に関する前記通達については、被告税務当局側は、通達の趣旨は課税もれのないよう注意しようとするものにすぎず、決してそれ以前において非課税と解していたわけでなく、それゆえ、いわゆる通達課税ではないと説明した。裁判所も、物品税法の解釈として「遊戯具」のなかにパチンコ球遊器が含まれると判断するとともに、本件課税処分がたまたま通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件の課税処分は法の根拠に基づく課税処分であるとして、いわゆる通達課税ではないとした。

物品税法の解釈として、パチンコ球遊器が物品税の課税対象物品を構成するものと解されるかぎり、裁判所の判断それ自体は間違っていないといえよう。なぜならば、通達を機縁として行われた処分であっても、その処分が適法であるか否かは、通達の見解をはなれて処分の根拠となった法規定自体の解釈から決定されなければならず、通達に示された解釈が法規定の正しい解釈を表現する場合には、その処分は結局法規定に基づいて行われたものといえるからである。しかし、本件の「通達課税」の問題は、このような形式論理のみによって解決されるというものではない。つまり、税務当局は事実において多年にわたって、税務当局側においても納税者側においても、パチンコ球遊器は課税物品ではないとの法的確信があったともいえる状態にあったのである。この状態が事実において、一片の通達によって大きく変更されたわけである、納税者側にしてみれば、従来納税義務がなかったのにこの通達によって納税義務が生じたことになる。つまり通達が事実において人びとの法的権利義務関係の創設に大きな影響を与えるわけである。ここにまさに問題が存在するのである。裁判所は、このような通達が現に果している機能にまったく考慮をはらわないで議論をすすめている。特定の事実状態が長期にわたって継続的に存続すれば、そのことが一つの法的価値をもつようになるといえる。それを軽々に破ることは法的安定性・法予側可能性の要請に反するといわねばならない。法的安定性・法予測可能性を重視する立場からいえば、取扱いの「変更」(本件のように納税者側にとって実質的には取扱いの変更とみられる場合を含め)は、すべて法の制定・改正によって行うべきであるといえよう。(本件の場合には「パチンコ球遊器」を物品税の課税対象物品とすることを法において明示的に特掲する改正を行うべきであろう)。

右のように、取扱いの「変更」はすべて、法の制定・改正によるべきであると解せられるのであるが、それは将来に向けての取扱いの「変更」に関してであって、過去に遡って納税者の不利益に取扱いの「変更」をすること、つまり課税することは信義則に反し、それに基づく処分は違法かつ無効であるといわねばならない(東京地判昭四〇・五・二判例時報四一一号二九頁)。

以上北野教授いわれる通り、通達により過去に遡って原告会社のパチンコ改修品に課税する事は信義則に反し、被告の更正処分は違法であり無効である。一、二審の判断は全く誤っている。すべからく最高裁判所は大法廷で本件を審理し、従来の判例を変更すべきである。

最高裁は、被告(一般的に行政庁の)の処分は、適法・有効であるとの従来の学説、判例を具体的事案に即して判断し、変更すべきである。

五、次に課税法律主義(憲法一四条一項)は、租税平等主義を意味する(清永敬次著「税法」三四頁以下)。

租税平等主義というのは、租税の領域にあらわれた平等原則を意味する。

租税平等主義は、租税の立法をなすに当って、租税の観点から本質的に同じ場合を恣意的に異なって取扱い、また本質的に異なる場合を恣意的に同じように取扱うことを禁ずる。

租税の観点からどのような場合をもって本質的に異なる場合とみるか、また恣意的な差別もしくは恣意的な同一取扱いとはどのような場合のことをいうのか、その判断は実際上は必ずしも容易ではない。

しかし、物品税の場合を例に考えるならば、特定の所得について他に合理的な理由がないにもかかわらずこれを課税にするとかもしくは非課税とすることにより著しい差別的取扱いが存するときは、このような優遇措置を定めることは本質的に同じ場合を恣意的に異なって取扱うことになり、租税平等主義に反するというべきである。特別措置が大量に存在するかどうかの検討がとくに望まれるところである。

立法原則としての租税平等主義についての判例にはあまりみるべきものがないが、源泉徴収制度に関する最高裁の判例(後掲〔重要判例〕をみよ。)、職業野球選手の所得を事業所得とし、音楽演奏家の所得を給与所得として取扱うことを平等原則に反しないとした例(東京地裁四三・四・二五判決、訟務一四巻六号六九九頁。)、娯楽施設利用税をスケート場等の利用に対しては課税せず、ゴルフ場の利用に対して課税することを同じく平等原則に反しないとした例(東京地裁四三・三・二一判決決、時報五一九号三八頁)などがある。

原告会社の改修品に対して課税するのは租税平等主義に違反する。

他の業者対して非課税としているのは違法である。五十三年五月二九日の説明会の内容(之は通達と解してよい)に反している。

改修パチンコ機のメーカーで原告会社のみに課税するのは憲法違反である。

六、一、二審は、被告のなす行為、あるいは、被告の作成文章はすべて適法だとする。裁判所はすべからく、原告会社と被告と同じ立場にたって判断すべきである。

被告(権力団体)のなす行為は、時が違ってもすべて適法で正当だと判断する。特に甲二五号証は原告会社が所持している。そして、原審は職権で被告に証拠申請をさせ、即時取調べをする。審理において原告会社と被告とを平等に取扱わない。法令違背、憲法違反である。

原告会社は、何を信じたらよいか、因る。

即ち、一、二審の判断は理由に齟齬がある。よって破棄さるべきである。

以下その事実と理由を具体的にのべる。

昭和五〇年二月二五日付(甲一九号証)で原告会社を調査した昭和四九年一一月五日より一五日問の物品税の調査の結果についての通知書が原告会社方に来ている。

この時は、山田氏外六~八名が調査に来る。見本台の一宛迄も含めすべて手落もなく全部適格に調査して行く。

原告会社代表者がこの折立会っているのでよく覚えており内容も知っている。

今と同じ機械(甲一四号証の一~五)を工場内で作っていた。指示、指導(甲二号証の第四四号書式)をして行く、調査にくるのは指示だけでなしに指導もする。この指示、指導を原告会社は信頼している。今回の調査による更正処分はしてみると信用、信頼できない。前回の調査の結果の指示、指導の昭和五〇年二月二五日付で来ている。昭和四九年の調査の折、機械をばらして(解体して)課税の対象になるか、ならないかを山田等に尋ねた。そうしたら、課税の対象にならない。あくまでも部品として記帳してくれといわれる。そういう指示、指導をうけた。

昭和四九年当時の物品も今と同じく、修繕、修理をしたものである。

今回、甲一五の物品につき、課税対象になるなら前回はっきり課税の対象となると明言すべきであったのである。今回来ていきなり課税の対象になるという。これはおかしい。理解に苦しむ。当時の契約書、注文書、領収書(甲二〇号証の一~二三号証の三参照)もある。

前回の書面もよく調査し、又担当者からも充分に聞くべきである。川口証人もいうように、甲一四号証の品物、甲一五号証の品物は全く見ていない。現物も知らないと証言している。又上司の許可を得た証言である。これは全く理解に苦しむ。原告会社が主張したいのは、この前の品物(物品)、証拠書類もみずにいきなり今回更正して課税してきている。現物をみずにどうして更正処分ができるか。不能な事を被告はしている。

乙二号証以下の書証は(不知だが)、更正処分をしてからの証拠である。

今回の更正について被告は、今回は今回であるという。被告は前は前であるという。前の時と今度の時はどこがどういう風に違うかをはっきり指導すべきである。これをせずにいきなり課税対象になるとして更正処分をしたのは納得できない。今迄の行政指導を無視している。話し合いもせず、説明も何もしない。もう少し人間的な話し合いがあってもよいのではないか。

その当時と今とでは単価がちがうと担当者はいう。現在の情勢において、物価が上昇している事は顕著な事実である。被告等の給料も上っているし。原告会社の従業員の給料も上っている。部品も値上りしている。値段だけで課税の対象になるのは理解に苦しむ。原告会社の更正分をしてから、組合の方で色々と課税について問題が起る。そこで被告は、甲一一号証の物品税説明会を聞く、そして甲一二号証の物品税説明資料をメーカーにくばる。被告は、何故もっと早くこの指示、指導をしなかったのか理解に苦しむ。

昭和五三年五月二九日(月)のことである。

この説明会の意見・見解になる迄に何故もっと早く説明しなかったか。今後はこのようになると説明する。

原告会社へ今回の調査に来た時に、甲一二号証の指導が前もってあれば、原告会社は何もいわないが、説明も指導もせずいきなり課税対象となる、課税対象にするとして更正処分をしたのは全く違法である。

右説明会には全メーカーが集まる。この説明会のある前には、右とも左とも判断がつかなかったのである。だから被告は説明会を開いたのでる。全メーカーを集めて今后はこうなると説明、指導をする。

原告会社方へ来た時にこのような資料があり、指導をしておれば、原告は、今回の更正処分に異議はないのである。

原告会社は納得できれば、できていれば、物品税の税金を払わないとはいわない。

同じ被告(同税局)で(人は変っても同じである)前の時と今回とでどうして課税処分が異なるのか。

原告会社は、パチンコ機の製造の専門メーカーである。

原告会社等の納税者は何を信じ、信頼したらよいか。原告会社としては、課税対象になる事がはっきりわかっておれば納税の申告をする。

被告は、前回の時に課税の指示、指導をせずに今回は今回であるとし、いきなり課税してきたものである。今回は課税対象になる。前の時は課税対象にならないかについて何等尋ねても被告は何の返事、回答をしない。

課税の対象になるのなら原告は単価を上げなければならない。企業である以上当然である。

前の調査官と今度の調査官とで結果が違うのはおかしい。北野氏が昭和四九年五月二五日付の裁判で既に本件物品は課税処分の対象になるといって甲二号証を持ってくる。もし、昭和四九年五月二五日既に課税対象になるなら、前回の調査時に何故言わなかったのか。適用をしなかったのか。横浜地裁でやった訴訟である。これを被告は提出してほしい。被告ではわかっている。昭和四九年の前回の調査時に指示、指導すべきである。なぜ指導、指示をしなかったか。この事は、原告会社の森川税理士も指適した通りである。

前述の如く、原告会社のみが昭和四九年に本件の物品を作っていた所に本件の更正処分に問題がある。調査の人によって結果が異なる所に一番の問題がある。そして指示、指導が物品税の賦課に重要な意味をもっている事は既に述べた通りである。

七、一・二審は、自由心証主義(民訴一八五条)に違反した事実認定の方法をとっている。

被告のいう事をのみ一方的に措信し、原告会社のいう事を措信しない。不合理も極まりない。

被告は「昭和四九年一一月原告会社方へ調査官七名を派遣し、パチンコ機関係の物品税調査をしたところ、業務代行人に関する課税標準について指示あるいは注意した(乙二九号証)。大阪等四ヶ所を被告は調査をする。その時に指示、指導をうけたのは、大阪の共栄物産である。代行契約をしていないのに抱らず(大阪の丸善物産と原告とは代行契約をしている)、丸善物産からそこに物品が渡ていた。「これはだめだ」として数字に卸売として被告は課税する。原告会社はこれに従い納税する。

原告には共栄物産については、何の連絡もなかった。原告会社としては、丸善物産が全部売っていると思っていた。共栄物産は中古屋ブローカーといったものである。

共栄物産に丸善物産が勝手に仕事をさせていた事が判明し、被告はこれの非違を指導し、卸売と調査する。原告会社は、この通り計算して納税を完了する。

計算書、ホールに切り渡した領収書、代行店の受取り等を「とじよ、整理せよ」の指示、指導は受けた。そのあと、業務代行店、ホールに被告のいうとおり、原告会社はきちんと整理をした。三枚写しになってる。内一枚はホール、一枚は原告会社、一枚は代行店にある。夫々所持している。

前回昭和四九年の調査時にはこの通しはっきり指導をうけている。原告会社はこれに従っている。

昭和四九年分の事は全部被告の指導通りにして終っている。所で、今回、株式会社マルホン、同共栄、有限会社タツミの三社について更正を被告はする。

先回の指示をうけた事はわかっている。業務代行店としては、右で宜しいという事でやって来ている。何故これだけのものを揃えて業務代行者の取扱いをしないかにつき、前回の五月二九日の説明会の指導をしないのか。

前回は、否認せずに今回は否認するのは違法である。

「法一一条一項二号所定の卸取引についての被告の解釈が違っていれば、一・二審の裁判所はそれをはっきり指摘もせずじまいで判決するのは、自由心証主義の重大な違背である。

八、次に、「手動成パチンコ機」の注文に際し、電動式に変更できるパチンコ機を移出した事が物品税法一条の別表第二種の物品「ハ」5のパチンコ機に該当するのとの判断は法令に違反する。代行人がホールへこれを移出して電動式にするかどうかは原告会社であるメーカーにはわからないからである。原告で代行人がどうしたかをいちいちチェックする事は不可能である。手動式がよいか、電動式にするかはホールの決定する所だからである。

一律に電動式になるものを電動式の卸売として課税する事は違法である。この点の審理は充分なさずにした原審の判断は審理不尽の違法で破棄を免れない。このような台数が何台あったかも不明であるにおいておやである。

この点は須く破棄して、原審でもう一度審理をしなおすべきである。

九、九州の大牟田の直営ホールについての一、二審の判決も法令違反、憲法違反である事は一、二項で述べた通りである。卸ち、同直営ホールは昭和四九年以前から営業をしている。昭和四九年の調査の折、原告会社は代表者と弟の専務(計理を担当している)が、計算方法について聞きその通り計算して来ている。これで宣しいと指示を受けて計算して来ているのに今回はいけないといっていきなりだめだといって更正する。法律に従った計算法方が違えば違うとはっきり何故指導しなかったか。

裁判所も措信しないといきなり判断せずに、仮に間違った行政指導があったとしても、之は間違ったものであると判断すべきである。

いきなり、原告会社のいう事はすべて措信しないという事は自由心証主義にも反する。

十、つらつら虞るに、最近矢つぎ早に日本の最高裁判所は、行政庁の行為を余り適法、有効と判断した判決を出し、国民特に本件では納税者の権利を侵害している。

最高裁判所しか行政庁の指示、指導、行為につき、法令違反か、憲法違反か、自由心証主義違反かを、充分記録をみて判断してほしいと念願する。心ある者は、司法権の危機を感ずるのは宜なるかなと思われる。

○昭和六〇年一月二四日付け上告理由書(二)記載の上告理由

一、今回の調査に基く更正決定の改修パチンコ機は、前回の調査時の改修パチンコ機と実質同一である。第(一)準備書面で述べた通りである。

被告は、前回は前回だと述べる。然し、物品税の対象になるか、部品として課税するかは、いうまでもなく大きな相違点が存するし、原告会社にとっては重大な事である。

尚、今回の被告のいう物品税の課税対象になるパチンコ機はすべて盤面がいつでも交換できるものばかりである。

今回、原告会社より移出したのは、盤面交換式になるものばかりである。このような改修品を前回時より作っていたのは原告会社のみである。

被告の担当者のいう証言の中にも原告会社に尋ねられた事はあるとのべている。

現物を前回調査に、全部ばらして見て頂いたのである。

原告会社の代表者もそれを証言している。

一、二審は、原告会社のいう事は措信しないという。被告側の証人は上司の許可を得て証言している。公務員の守秘の義務を守って、又上司の指示、許可のあった事以外はしゃべらないのである。

原告会社と被告とで証人の証言の信憑性につき、一、二審は平等に扱わない。

凡そ、課税庁の担当者は、証人にたてばすべて上司の許可を得て証言している。裁判官ならともかく、行政庁の職員は自分の関係事件について課税庁に不利なことは絶体言わないのである。

一、二審の証人の証言の信憑性についての判断は、法の下の平等の原則に反する。これは憲法違反である。

二、原告会社は何も物品税の対象になるものなら納入すると一貫して、主張している。だから、本件の本税もすべて仮納付しているのである。

仮納付して原告会社は、行政訴訟を起しているのである。脱税するというなら仮納付はしないのである。

だから一、二審の裁判所は、本件更正処分の対象たる改修パチンコ機がいつから課税対象になっているかを充分に理由中で判断しなければならないのである。その課税時期については一、二審は何等判断をしていない。

原告会社としては一、二審の判断は理由不備だといわざるを得ない。この点からも一、二審の判断は理由齟齬で破棄を免れない。

三、尚、改修盤面交換式のものであれば、ホールで盤面のみを交換すれば課税の対象にならないという。工場で仕組めば物品税の対象になるという。これも納得のいかない事である。この点についても被告は、先述の説明会のある迄はっきりとした見解を示していないのである。この点についても一、二審は何の判断を示していない。

原告会社は、今迄工場外で交換する場合と、工場内で交換する場合で相違する事については、一度も指導を受けた事はない。

この点についても一、二審は何等の判断をしていない。審理不尽、理由齟齬で破棄を免れない。

四、盤面の単価が五千円以下であれば課税の対象にならないという。この点についても、単価によって課税対象になるか、ならないかの説明も今迄うけた事はない。前記説明会において始めて知る。

この点についても一、二審は何等の判断をしていない。

五、直営ホールの改修パチンコ機についての行政指導についても一、二審は何等の具体的な説明をしていない。前回と今回とが違うなら、違うとはっきり判断を示すべきである。仮に誤っていたとしたら、これを今回のように是正するのが正しいと判断がしてほしいのである。この点についても一、二審は判断をしていない。

六、尚、日本遊技機工業組合は、パチンコ機の証紙を販売している。

このメーカーが工業組合より買ってパチンコ機にはりつけるのである。

この証紙の貼っいない機械は、税務署も公安員委会も認めないのである事は顕著な事実である。

証紙の点からみて今回の本件パチンコ機が全部課税品となると判断しているのは間違っている。

たゞ証紙は一度に何枚か、原告は予定して購入し、はりつけるのである。証紙について物品税の課税品となるかどうか(部品としてか、新製品としてか、改造品か盤面交換品か)の判断を一、二審はしていない。

原審裁判所は、原告申請の組合理事長を合議の上尋問する必要はないという。

然し、これは大事な事であり重要な法律上の事実である。証紙がどういうものか、これはどうして出来ているか、税務当局(被告)と組合と、公安委員会との関係がはっきりしない事には本件改修品が物品税の対象になるかどうかは判断できないのである。法令違反も甚しいものというべきである。

今迄パチンコ機と証紙との関係のふれた判例は一つもない。須らく最高裁はこの点を明白にして、物品税との関係を(日本遊技機工業組合との関係も含めて)(又公安委員会との関係も含めて)明白にすべきものである。

行政庁とメーカー、メーカーと組合、公安委員会とは密接な関係がある。税法もその点できめられて行くのである、それを無視した原審の判断は、憲法違反、法令違背も甚しい。

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